ガラクタギター博物館
THE JUNK GUITAR MUSEUM MATSUMOTO
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(林木工所とKENTギター)


当時を良く知る、信州の名工 百瀬恭夫氏にその頃のことをお聞きしました。

 

林木工所は、元々は家具を作っていた会社で、後に富士弦楽器の下請け、自社で完成品のギター(KENT)を作っていた。

 

百瀬氏は富士弦楽器の篠田氏に誘われ、1965年で富士弦楽器を退社し、林木工所の一角を借りて、バリトーン・ウクレレを作る会社で働いたが、売れなかったため1年ほどで林木工所で働くようになる。

 

当時、林木工所では富士弦楽器の下請けでギターのネックやボディを作っていたが、その仕事がなくなり(なくなった経緯はフジゲン創世記参照)自社ブランドを作りたいと林社長に言われて、完成品のギターを作るため、百瀬氏が過去に富士弦楽器で働いていたという理由ですべてを任される。しかし、百瀬氏は家具職人で、ギターが好きで入社したわけでもなく、ギターのことは殆ど分からないため、しかたなく富士弦楽器に頭を下げての不良品ギターをもらってきて、それを分解、研究して自己流で構造を覚えたそうです。(詳細はフジゲン創世記参照)

 

そうして林木工所でのギターは設計から製作まで百瀬氏が担当した。ブランドはKENTというバイヤーズブランド。

それらは全て百瀬氏の設計で、治工具も全て作った。バイヤーとも会った記憶がある。他のKENTモデルについては定かではない。

ボディは積層合板(ランバーコア)で、側面の積層を隠すためにKENTの特徴の側面中央に入れられたバインディングを考えた。積層合板で加工は難しくなくて、バインディング用のトリマーで溝を掘った。また、積層合板の中身をくりぬいてフルアコースティック・ギターも作れたと語る。



KENTの最上位機種KENT742。他に740,741,743,744,745がある。とてもゴージャスな印象。
その他にフルアコモデルは820,821,822がある。

 

当時のフレットは当時、抜け防止の返しがなく、そのままでは抜けてしまうため機械を持っている黒雲製作所で刻みを入れてもらうのをお願いした。

当時の林木工所の従業員は30〜40人いて、ソリッド・ギターは月に30〜40本。アコースティックギターも月に20本くらい作った。ネックを外注にお願いしていたこともある。KENTはバイヤーズブランドで、林木工所以外でも作っていたようだ。

KENTP.U.は日伸音波。金属部品は信越鋲螺。アコースティクギター用の木材は岡谷市のサンエス工業から乾燥、製材したものを仕入れた。ソリッド・ギターの合板は別の会社からトラックで仕入れた。

 

林木工所にバイヤーがモズライトを持ってきたことがある。フェンダーやギブソンを見たことがなかったが、とても素晴らしいギターだと思ったそうだ。

 

後にRiderというアコースティックギターを作った。それはウエストンミュージックの八塚氏のOEMブランド。八塚氏からもっといいものをつくろう。それには新しい工場を作ろう。と強く誘われ、いいものを作りたかったし、林木工所ではこれ以上は無理だろうと思い、1977年に林木工所を退社して、ヘッドウェイを立ち上げる。

百瀬氏が1977年に会社を辞めた後1年くらいで林木工所はなくなった。

 

大まかですが、林木工所のことを知ることができました。
百瀬氏には大変感謝申し上げます。

 

今でも現役のギタービルダーとして尊敬される百瀬氏のルーツが富士弦楽器にあったことも大変興味深いものでした。

 

ここまで2015/12/29


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2015.12/29
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